YADO TABATA
宿 | 京都 | 堀川丸太町 | 木造 | 京町家 | 改修 | 2025
宿 | 京都 | 堀川丸太町 | 木造 | 京町家 | 改修 | 2025
京都は堀川丸太町近くの京町家一棟貸しの宿 既存の建物はお施主支給さんの祖父母の家でした 職住一体の呉服店として住み継がれてきた京町家は 丁寧に美しく使われ続け、 また心地よい奇蹟の大きい空間を持っていました 家族の記憶と、物質としての歴史を宿す建築を 限りなく残せるところは残し、受け継ぐことを決めました 記憶と歴史を宿す背景となる建築の中に 人々を迎え入れる空間の質を担保する 美しく質の高い「もの」たちを 一から生み出すもの、すでにある美しいものを問わず 空間の中に関係性を持たせながら存在させています この先も、この「もの」の一部は変化し、 その度にこの建築は更新され、 記憶と歴史を積み重ね紡いでいくでしょう
京町家は道に対して間口が狭く、奥行きが長いという 特徴を持つことから、奥行き方向に壁が少なく、 地震に弱いとされています こういう既存の現状から良質な京町家が壊され、 建て替わることが多く見受けられます 昭和25年以前の京町家には、良質な木材が構造体に使われ、 既存の土壁は日本ならではの風合いを持ち 窓から入る光は床を照らし 天井付近には闇だまりをつくる、日本人が美しいと感じ、 また心が落ち着く空間を持っています そんな京町家を特徴を残しながら、地震にも強くし、 住み継いでいく方法を構造家の東郷さんと共に考えました 京町家は基本的に同じ平面形態を持っています 建物前の道路から奥庭へ靴のまま通行できる「通り庭」と それに直交するように配置される滞在するための「室」です 「通り庭」は通行空間なので壁面は存在せず 「室」に関しても、採光の確保や室同士の連結のために 壁面がないことが多いです 今計画では既存の 「通り庭」の部分に耐震壁を設け、「室」化し、 既存の「室」の部分を 「通り庭」化する平面の反転を試みました 「通り庭」に存在する耐震壁の直下には、 新設後打ちの有筋の基礎を設け 耐震壁と金物で接続することにより、 新築と同等の地震への抵抗力を持たせています 同時に、京町家ならではの「火袋」「通り庭」「奥庭」 「通り庇」「離れ」は残すと共に、 「床下の埋め込み式床暖房」「鴨居下での高さの確保」 「バリアフリー」などの現代の生活に必要な機能も 付与しています 床暖房により、京町家の底冷え問題を解消し冬は暖かく 高さの確保により、外国の方が来ても頭を打たず過ごせる バリアフリーにより、より誰もが不自由なく使える 京町家の課題であった「耐震」「寒さ」「高さ」 「バリアフリー」を平面の反転という単純な操作により、 京町家としての空間は担保しながら解消しています 先述のとおり、 京町家は基本的に同じ平面形態を持っているため この平面の反転という操作は、どの京町家にも使用可能です また基礎の新設や耐震壁を設ける工事も難易度は低く どの施工業者さんでも施工できる構法になっています 今計画の改修方法が、 京町家改修の一つのプロトタイプとなり 多くの良質な京町家が 京都で受け継がれていくことを願っています
写真
:大竹央祐
建築
:日々
施工
:いまむら工務店
structure
:IN-STRUCT
|Takuma Togo